
夜になると、考えなくてもいいことばかり考えてしまう。
昼間は仕事をしているから平気なんです。
会議があって、メールを返して、同僚と笑っている時間は、彼のことを忘れられる。
でも、一人で部屋に帰って電気を消す頃になると、決まって始まります。
「今、彼は何をしているんだろう。」
その一つの疑問から、頭の中で勝手に物語が始まるんです。
きっと今は家に帰っている。
奥さんとご飯を食べているのかな。
テレビを見ながら笑っているのかな。
「おかえり」って言われているのかな。
そんなこと、誰も教えてくれない。
見たわけでもない。
なのに、頭の中では鮮明に映像が浮かんでしまう。
見たくないのに。
想像したくないのに。
勝手に苦しくなる。
彼と一緒にいる時は、「好きだよ」と言ってくれる。
私を見つめて笑ってくれる。
その時間に嘘はないと信じたい。
でも夜になると、その自信はどこかへ消えてしまう。
「結局、帰る場所はあっちなんだよね。」
そう思った瞬間、胸が締めつけられます。
スマホを開いて、最後のLINEを読み返す。
返信は昼の「お疲れさま」で止まったまま。
「今日は忙しい。」
その一言だけなのに、夜になると意味が変わって見えてしまう。
本当に忙しいだけ?
それとも、家では私に連絡できないだけ?
また考えてしまう。
そして、奥さんのことまで想像してしまう。

どんな人なんだろう。
優しい人なのかな。
料理が上手なのかな。
彼は家で笑っているのかな。
比べたって仕方ない。
答えなんて出ない。
それでも、心は勝手に比べ始める。
「私なんか、最初から勝てない。」
そうやって、自分で自分を傷つけてしまう。
ある夜、そのことを先生に話しました。
「毎晩、奥さんのことばかり考えてしまうんです。」
先生は否定しませんでした。
「そうなる夜もあるわよ。」
その一言だけで、涙が出ました。
「でもね。」
先生は続けました。
「あなたが苦しんでいるのは、奥さんの存在じゃない。」
「見えない時間を、全部悪い想像で埋めてしまうことなの。」
その言葉に、息が止まりました。
私は奥さんに苦しめられていたんじゃない。
何もわからない時間を、不安だけで塗りつぶしていたんです。
先生は言いました。
「想像には終わりがないの。」
「だからこそ、想像よりも現実を大切にしなさい。」
彼があなたに向けてくれた言葉。
一緒に過ごした時間。
実際に積み重ねてきた出来事。

そこから離れて、見えないものばかり追いかけると、心はどこまでも苦しくなるよ、と。
その夜から、すぐに不安が消えたわけではありません。
今でも夜になると、胸が苦しくなる日があります。
それでも以前のように、想像だけで自分を追い詰めることは少なくなりました。
「今、私は想像の中で泣いているだけかもしれない。」
そう気づけるようになったからです。
誰にも言えない恋は、夜がいちばん長く感じます。
だからこそ、苦しい夜を一人で抱え込まなくてもいい。
そう思えたことが、私にとっては、恋を続ける以上に大きな救いだったのかもしれません。
真美ねぇ、どんな恋の話でも聞いてくれるところあるって知ってた?
もやもやを吐きだして、苦しい夜を少し好きになろう






