深夜2時、泣きながら電話した。

部屋の電気は消していたのに、スマホの画面だけがやけに明るかった。彼とのトーク画面を開いて、閉じて、また開く。最後のメッセージは私からだった。
「無理しないでね。落ち着いたらまた連絡して」
既読はついている。
でも、返事はない。
たったそれだけのことなのに、胸の奥がずっとざわざわしていた。仕事が忙しいだけかもしれない。寝落ちしただけかもしれない。頭ではいくらでも理由を作れるのに、心は一番悪い答えだけを選んでしまう。
もう、好きじゃないのかもしれない。
私が重かったのかもしれない。
あの時、余計なことを言ったからかもしれない。
布団の中で何度も寝返りを打った。眠ろうとするほど、彼の声や表情が浮かんでくる。会っている時はあんなに優しいのに、会えない時間になると、私は彼の気持ちを信じられなくなる。
午前1時を過ぎた頃には、涙が止まらなくなっていた。
誰かに連絡したかった。でも友達にはできなかった。「まだ返事がないだけでしょ」と言われるのがわかっていたから。正しい言葉ほど、深夜には刺さる。
気づけば、電話占いの画面を開いていた。
何度か迷って、指が震えながら通話ボタンを押した。
「もしもし」
聞こえてきた声は、想像していたよりも落ち着いていた。
私は最初、何も言えなかった。
泣いていることを悟られたくなかった。でも先生は、急かすこともなく言った。
「大丈夫。今は言葉にならなくてもいいですよ」
その一言で、堰が切れた。
「先生……私、彼に嫌われたんでしょうか」
自分でも情けないと思った。たった一通の返信がないだけで、こんなに取り乱しているなんて。
でも先生は笑わなかった。
「返信がない時間って、心が勝手に悪い物語を作ってしまうのよね」
そう言ってから、私の話をゆっくり聞いてくれた。
彼が最近忙しいこと。会うと優しいこと。私が不安になると、つい長いメッセージを送ってしまうこと。言いながら、自分でもわかっていた。私は彼の沈黙が怖いというより、置いていかれる自分が怖かったんだと思う。
先生は少しだけ厳しく、それでも温かく言った。
「今夜は、彼の気持ちを決めつけないで」
「返事がないことと、愛されていないことは、同じではないから」
その言葉を聞いた瞬間、呼吸が少し楽になった。
先生は続けた。
「今日はもう送らない。スマホを伏せて、お水を飲んで、眠れなくても横になっていなさい」
まるで遠くにいる母親みたいだった。
私は「はい」と返事をした。

電話を切ったあとも、彼から連絡は来なかった。
未来が変わったわけでもない。
それでも、さっきまでの私は少し違っていた。
彼の返事を待つだけの夜から、自分を壊さないために休む夜へ変わっていた。
朝になってスマホを見ると、彼から短いメッセージが届いていた。

「ごめん、昨日は寝落ちしてた。大丈夫?」
その文字を見て、また泣いた。
嬉しかったからではない。
あんなに苦しかった夜を、自分で勝手に大きくしていたことに気づいたから。
深夜2時、泣きながら電話したあの夜。
先生がくれたのは、彼の未来を言い当てる言葉ではなかった。
不安に飲み込まれそうな私を、静かに現実へ連れ戻してくれる声だった。
真美自分を自分で壊す前に、電話してみない?


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