
初めて“未来”という言葉が怖くなかった。
既婚者への恋だと分かった瞬間から、
この想いには行き場がないことも、
報われないことも、全部分かっていた。
それでも、心だけは止まらなかった。
優しくされるたび期待して、
期待するたび自己嫌悪に沈んで、
夜になると同じ問いを何度も繰り返した。
「どうして、この恋を選んでしまったんだろう」
誰にも言えなかった。
祝福されない恋を口にする勇気もなかった。
周りは幸せそうで、
笑顔の写真や結婚の報告が流れてくるたび、
私は静かに心を閉じていった。
そんなある日、限界だった。
何をしても楽しくなくて、
このままじゃ自分を嫌いになりきってしまう気がして、
すがるように占い師に電話をかけた。

電話口の声は、驚くほど落ち着いていて、
不思議と緊張がほどけた。
彼との出会いの時期も、
彼の性格も、
私が彼をどう見ていたかまで、
まるで心の中をそのまま読み取られたようで、
ただ黙って頷くことしかできなかった。
「この恋は、あなたを壊すために来たんじゃありません」
その一言で、涙が止まらなくなった。
「今は運気が滞っているけれど、
人との縁を大切にすると流れが変わります」
そう言われた時、
初めて“未来”という言葉が怖くなかった。
電話を切ったあと、
世界が急に変わったわけじゃない。
彼への想いも、すぐに消えたわけじゃない。
それでも、
朝起きたときの空気が少し軽く感じられた。
意識して、周りを見るようにした。
家族の何気ない会話。
友人の冗談。
同僚の「ありがとう」。
今まで見えていなかった大切な人たちの笑顔が、
少しずつ目に入ってくるようになった。
不思議なことに、
私が前を向き始めると、
周りの空気も柔らかくなっていった。
笑顔が増えて、
「最近なんだか雰囲気変わったね」と言われて、
その言葉が素直に嬉しかった。

叶わない恋は、今も心の奥に残っている。
でもそれはもう、
自分を責めるための刃じゃない。
人を本気で想えた証として、
静かに胸に置いている。
あの時、誰かに話していなければ、
私はきっと同じ場所で立ち止まっていた。
運気が変わったというより、
自分の向き合い方が変わったのだと思う。
今は、
周りの大切な人が笑っている景色を見ると、
心から「よかった」と思える。
その中に自分がいることが、
何より嬉しい。
真美叶わない恋をした自分を受け入れて、前向きたい方はこちら。



