
ただの上司だと――そう思っていた。
最初は尊敬に近い気持ち。
仕事ができて、皆から信頼されて、いつも冷静で頼もしく見えた。
私にとってあなたは、ただの職場の人。
そう言い聞かせてきた。
けれど、ある日ふとした仕草に目を奪われた。
資料を渡されたときに、指先が少しだけ触れた。
優しい笑顔で「大丈夫?」と声をかけられた。
ほんの些細なことなのに、胸の奥で何かがざわめいた。
その瞬間、私は気づいてしまった。
――『好きかもしれない』と。
その気持ちは、認めてはいけないもの。
彼には家庭があって、私には立ち入ることのできない世界がある。
わかっているのに、心は勝手にあなたを追いかけてしまう。
朝の「おはよう」で一日が始まり、
仕事終わりの「おつかれさま」で胸が温かくなる。
ただそれだけで心が揺れ動くなんて、どうして私はこんなにも単純なんだろう。
同僚と楽しそうに話すあなたを見て、
笑顔の理由が私じゃないことに、胸がきゅっと痛む。
名前を呼ばれるたびに、鼓動が速くなる。
ほんの短い会話なのに、頭の中では何度も繰り返し再生してしまう。
他の人にとっては日常の一コマでも、私にとってはかけがえのない宝物。
愛に満ちた心は、本来なら幸福を運んでくれるはずなのに、
どうしてこんなにも悲しみで溢れてしまうのだろう。
あなたを思えば思うほど、
「叶わない」という現実が影を落とす。
この恋は、きっと報われない。
でも、心に芽生えてしまった想いを簡単に消すことなんてできない。
好きになった自分を責めては、またその優しさに救われる。
距離を置こうと決めても、視線は自然とあなたを探してしまう。
まるで光を求める花のように。
私は今日も、誰にも気づかれない場所でひとり、
あなたへの想いを抱きしめている。
それは甘くて切なくて、どうしようもなく愛おしい片想い。
きっとこの胸の痛みと共に、私は大人になっていくのだろう。
そしてまた明日も、あなたの「おはよう」に笑顔で返してしまう。
――言えないままの気持ちを隠しながら。

妄想で終わらせますか?あの人のぬくもりを感じますか?

