
受話器を耳に当てた瞬間、心臓が一段跳ねた。
ドクン。
まだ何も始まっていないのに、胸の奥が先走る。
この音、向こうに聞こえてしまうんじゃないかと、本気で思った。
「今のお気持ちから、聞かせてください」
低く落ち着いた声。
それだけで、心拍が一気に速くなる。
ドクドクドク。
喉が渇く。息が浅くなる。
私は無意識に、胸に手を当てていた。
話し始めると、さらに早まる。
言葉にするたび、鼓動が追いかけてくる。
ドン、ドン、ドン。
焦る。
この音が、私の弱さを全部ばらしてしまいそうで。

沈黙が訪れると、今度は別の音が聞こえる。
ドク……ドク……
少しだけ、間が伸びる。
占い師は急かさない。
その沈黙が、逆に怖い。
次に来る言葉を、心臓が先に予測しているみたいだった。
「それは、苦しかったですね」
その瞬間、
ドクンッ、と一度だけ大きく跳ねたあと、
少しずつリズムが変わった。
さっきまでの暴れるような速さじゃない。
まだ早いけれど、整い始めている。
ドク、ドク。
呼吸が深くなるのが、自分でもわかる。
不思議だった。
未来の話をされたわけじゃない。
当てられたわけでもない。
ただ、否定されなかっただけ。
それなのに、
胸の中で鳴り続けていた警報みたいな鼓動が、
少しずつ、通常の音に戻っていく。
「無理に答えを出さなくていいですよ」
その一言で、
ドク……ドク……
心拍が、はっきりと落ち着いた。

ああ、私、ずっと戦闘態勢だったんだ。
誰かの言葉に傷つかないように、
見捨てられないように、
心臓まで緊張させて生きていたんだ。
鑑定の終盤、
心拍はまだ確かにそこにあるけれど、
怖さはなかった。
生きている音として、ちゃんと胸に収まっていた。
電話を切ったあと、
静かな部屋で、
ドク、ドク、という音を確かめる。
このリズムなら、今夜は眠れる。
そう思えた。
真美最近、眠れてる?






